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技術論文

道改地第3-1号 県道高知空港インター線道路改築工事

平成23年度 高知県優良建設工事施工者表彰「高知県知事賞」

山本 稔治入交・ジョウトク特定建設工事共同企業体
監理技術者 山本 稔治(入交建設株式会社)

1.はじめに

県道高知空港インター線は南国市物部地区において、高知龍馬空港を拠点とした交通ネットワークの形成を目的とし、安全快適な交通確保においても早期の完成が期待されている高規格道路であります。

当工事区間は、高知空港インター線整備区域の中北部に位置し、地形的には物部川水系の旧河道敷きとなるため、出水時には浸水の影響を受けやすい地理的条件でありました。そのため、工作物は排水機能を充実させた「避越函渠(ボックスカルバート構造)」にて、本来の道路としての機能を果たし、地域住民の安全と社会基盤の整備を目的とした工事を行いました。

写真1

2.工事内容とその課題について

工事場所
高知県南国市物部
工期
(自)平成22年2月26日〜(至)平成22年11月7日
工事内容
道路改良延長 L=340m・土工=1式・重力式擁壁 L=217m・L型擁壁 L=46m・鍬止め壁 L=51m
・排水工 L=217m・坂路工 N=1箇所・国道切下げ工 L=18m
・2号避越函渠工(ブロック9〜ブロック13)

県道高知空港インター線建設工事の一端を担う当工事において、全体事業の関連で工事期間の大半は夏季での施工となりました。懸念されるのは、工事の主たる構造物が避越函渠(ボックスカルバート)であり、高強度なコンクリートを暑中コンクリートとして取扱う場合は、水和反応による温度上昇や下降時の温度差による温度ひび割れや、施工時におけるコールドジョイントの発生が予想され、コンクリートの品質に対して悪影響が懸念されました。

この事より、コンクリートの品質を低下させるひび割れの要因や現場周辺の諸条件に対して良質な品質の構造物を確保する事が課題となりました。

3.コンクリートの品質確保における対応策・工夫とその効果について

基本事項

品質を阻害する要因として、コンクリートの内部拘束と外部拘束によるひび割れとともに、現場の気象条件である強風によりコンクリート表面の乾燥収縮に影響されると特定しました。

当現場に置いてはこのような要因を事前に確認し、又、この対策だけでなく総括的な目標として、施工においては「より良いコンクリート構造物を施工する工夫」を現場の基本方針として掲げ、品質の向上を目指して取り組んでまいりました。

実質的な内容は、関係者全員が理解でき施工現場に反映できる様、施工順序に基づきコンクリートの施工前・施工中・施工後において段階ごとに目標を設定し、周知・確認を行いながら品質向上に努めました。

3-1.コンクリート施工前における品質向上施策

(1)コンクリート工における講習会(勉強会)の実施

コンクリート施工にかかわる関係者全員(発注者・本社・現場職員・生コン会社・施工現場の作業者・ポンプ会社)でコンクリートの性質や打設方法に関して知識を深めてもらう目的で、講習会(勉強会)を実施し、品質意識の向上に努めました。

(2)コンクリート工場における設備の確認調査

コンクリートの施工に先立ち、コンクリート工場の設備や材料(セメント・骨材・水等)の品質や保管方法、又は運搬方法の確認調査を当社所属の専門技術者同伴にて実施し、事前の材料確認を行いました。その場合、当現場のコンクリート夏季配合においても品質検討会を行い、夏季配合の対策を行いました。当現場では水和熱の発生も考慮し、単位水量でなく混和剤を遅延型にすることで、コールドジョイントの発生を防ぎ、水和熱の発生を抑制する効果が得られました。

(3)コンクリート打設手順の確認会(打合せ会)の実施

事前に打設箇所・打設ロットの詳細計画(打設手順)を作成し、施工量・打設時間の設定を行いました。そして施工方法・役割分担を確認する意味で「打設手順確認会(打合せ会)」をすべてのコンクリート打設前に実施致しました。

打設手順確認会においては、コンクリート講習会の確認と打設方法の確認ができ、作業間の連絡方法においても意志の統一化が図られ、品質向上においてより良い効果的がありました。

写真2

3-2.コンクリート施工中における品質向上施策

(1)コンクリート打継部遮光ネットの設置

施工範囲が広く、1次コンクリート(下部の柱)から2次コンクリート(上部の頂板)までの時間経過において、ひび割れを伴うコールドジョイントの発生を防止するため、柱部の打設終了から頂板部へ打継ぐ時間は遮光ネットで日差しを遮り、施工中の急激な乾燥を防ぎ、円滑なコンクリート打設作業につなげる事ができました。

(2)頂板部打設前に柱部分に再振動の実施

打設区間が広範囲であり上記で実施した遮光ネットと併用して、柱部の沈下ひび割れを防止するため、頂板打設前に小型バイブレータで再振動を行い締固めを実施しました。

締固めはコンクリート作業の専属監視員を配置し、打設の時間間隔と再振動時間を確認しながら、確実な施工につなげていきました。
(仕上がったコンクリートは沈下ひび割れもなく密実でより良い仕上がりとなりました。)

写真3

3-3.コンクリート施工後の品質向上施策

(1)コンクリート打設中〜打設後における初期のひび割れ対策

コンクリート打設中における直射日光による急激な乾燥収縮を防止するため、コンクリート打設(ポンプブーム操作後)と並行して打設箇所上部に遮光ネットを設置しました。コンクリートの品質向上と同時に作業者に対する熱中症対策にも効果がありました。

又、コンクリート表面における初期の乾燥収縮によるひび割れを防止するため、表面の仕上げ作業と並行して被膜養生剤を散布して水分の蒸発を防止しました。

(2)コンクリート打設後の養生方法

コンクリートの急激な乾燥収縮を防止するため、側面は内部の状態が確認できる透明のビニールシートで全面を覆い、頂板部はアクアマットを敷設し、表面の保温と保湿を確保しました。

写真4

3-4.よい品質のコンクリート構造物を施工する工夫について

当工事はひび割れのないコンクリート構造物を、施工段階に基づいて管理してきましたが、その他の品質向上対策の実施事項についても記述します。

(1)外周壁部分の外部拘束によるひび割れ防止対策

函渠工における外周の連続壁は、外部拘束によるひび割れが懸念されたため、止水効果のある誘発目地を5m以内の間隔で設置し、目地部分へ計画的にひび割れを集約し構造物全体の品質向上対策に効果があった。

(22)鉄筋交差部における全結束

コンクリート打設時に鉄筋が揺れ動かないよう、交差部を全結束し、緩みを防止して鉄筋の周囲に水分の多いモルタル分が集まらないように管理し、びび割れを防止しました。

(3)コンクリート内部への不純物の混入防止対策

長靴に付着した泥等を除去する様、靴洗い機を設置して不純物の清掃確認を行いました。又、打設前には、毎回洗浄機と掃除機で内部の清掃を徹底管理し本作業に移行しました。

(4)コンクリート温度管理の実施

コンクリート打設後、内部温度・外部温度・表面温度・外気温度を常に把握し、正確な養生管理を行うことで温度ひび割れの防止を行いました。又、型枠解体時期を確認する事も可能となり、構造物のひび割れ防止対策に効果がありました。

写真5

4.おわりに

当工事はコンクリートのひび割れや品質確保において非常に厳しい時期でしたが、当初より目標を掲げた「より良いコンクリート構造物を施工する工夫」に基づき、品質向上対策を確実に実施した結果、ひび割れはもとよりその他の初期欠陥もなく、出来栄えの良いコンクリート構造物ができたと思います。この工事は、構造物の重要性より品質向上のために必要な事項を誠実に実践したため、その成果が得られたと思われます。

今回の工事においては、品質管理を主として記述させていただきましたが、工事全体においては発注者の高知県・関係機関における皆様の御指導や、地域の方々・工事を施工された方々の御協力により、無事故・無災害で完成できました事を心より感謝申し上げます。

これからも社会資本の整備においては、当工事で経験した事を糧とし貢献していきたいと思います。

写真6

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