平成22年度表彰 高知県優良建設工事
株式会社西森建設
工事技術職 主任技術者 安井 誠
本工事地区、吾川郡仁淀川町長者(旧仁淀村長者)は、全国的に有名な大規模蛇紋岩地すべり地帯であり、古くから地すべり変位が生じていた。(旧仁淀村史等には、西暦792年に斜面大崩壊。また西暦1792年・1822年の大洪水による地すべり災害事例等の記述が残されている。)このような、地すべり災害を抑制する為に、昭和27年より地すべり対策事業(横ボーリング・集水井・排水トンネル)が施工開始された。
幾度かの台風及び集中豪雨等により地すべりが滑動を起こし、既設1号排水トンネルの一部分(被災箇所)が崩壊、排水処理機能低下を及ぼした。
本工事は、上記既設1号排水トンネルの被災箇所に滞留する地下水を新設3号排水トンネルへ導く排水ボーリング及び、地山地下水を排除する集水ボーリングの施工となる。
図1-1
図1-2
はじめに、地すべり変位により被災した場所の位置を把握するための現況測量を行う。その時、滞留水の位置関係ならびに水深等の調査も平行して行った。それらの収集データをもとに設計法線との相異を確認、削孔法線・角度・高さ位置を決定した。
次に、決定した削孔法線・角度・高さ位置で被災箇所への先行ボーリングを行い接続の確認を試みた。結果、既設1号排水トンネル内(被災箇所)のインバートコンクリートを採取、接続の確認ができた。
排水ボーリングの接続管理として、既設1号排水トンネル内で目視によるケーシングパイプ到達を確認した。設計削孔長で到達状況が確認できない場合については目視確認できる位置まで削孔を施し、接続の確認を行った。
また、写真1-2のように崩壊等により目視確認が不可能な排水ボーリング箇所については、接続前と接続後の滞留水水位を計測し水位の変動で接続確認を行った。
既設1号排水トンネル滞留水完全排除
本工事地区は全国的に有名な大規模蛇紋岩地すべり地帯であり、地すべりブロックの規模は幅約200m、長さ約900mである。また、これまでの長者地すべり地質資料の解析結果として、地質は秩父累帯に属する黒瀬川構造帯の伊野層で、泥岩、砂岩、礫岩、花崗岩、石灰岩、そして蛇紋岩からなる地質解析結果がでている。
また、地すべり総合調査を実施した昭和39年には1.5m/年程の移動杭水平移動量が観測され、昭和46年頃には平均50cm/年と約1/3に減少となったが、昭和50・51年の台風に伴う豪雨により地すべりの滑動が再び活発化した。(68〜167cm/年の移動量)
上記で述べた様に全国的に有名で珍しい地すべり地帯であるため、地すべり深部からの土質資料(すべ り面確認コア)は非常に貴重かつ、長者地すべりにおける地質解析資料として充分に活用の価値ありと試案し、先行ボーリングの他にすべり方向が断面としてつながる位置に2本追加し、計3本の土質資料採取を行った。
既設1号排水トンネル滞留水完全排除
断面図へ今回採取された土質資料を地層別に分布すると、図1-3のような地質層となった。推定すべり面とされる位置には蛇紋岩の層があった。蛇紋岩の特性として、水や温度変化の影響等で風化すると粘土化しやすい特性がある。この粘土がすべり面を形成し地すべりの素因になる事が多い。
写真5-3
写真5-3
狭い断面合わせた構造、左右に方向移動できるハンドルをもうけ、動力は人力による運搬移動。安全かつ機械による排出ガスがなく坑内作業の改善となった。また、台車にはゴムタイヤを使用し坑内既設構造物の破損防止にも努めた。
写真 坑内運搬台車制作
写真 坑内運搬台車使用状況
本工事の施工にあたり中央西土木事務所越知事務所の皆様には、ご指導いただき大変貴重な経験ができました。現場従事者、会社一同、心よりお礼申し上げます。
これからも今回の経験を活かし、よりいっそう会社の技術力向上を目指していきます。