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技術論文

20災第7-3号 国道194号道路災害復旧工事

平成21年度 高知県優良建設工事施工者表彰「高知県知事賞」受賞作

和田正大株式会社 四国ネット
和田正大

はじめに

当災害箇所は、平成20年4月19日に大規模な土砂崩壊があり全面通行止めになった。崩壊箇所は、太平洋側と瀬戸内海側を結ぶ、四国のど真ん中を縦断する重要な輸送ルートであり、地域の利便はもちろんのこと、四国の産業振興にも大きく関わることから、一日でも早い全面開通が望まれていた。しかし、片側交互通行の復旧までに約2ヶ月、調査設計に約3ヶ月、計5ヶ月にわたる交通規制の後の受注であった。

写真1

工事概要と課題

工事概要

工事場所
高知県吾川郡いの町上八川下分
工期
平成20年9月19日〜平成21年3月31日
178,497,900円
工事内容
施工延長 L=134.5m
吹付法枠工 A=4,566m²
鉄筋挿入工 L=2,205m(735本)
落石防護柵 L=126.3m

課題

工期短縮

約5ヶ月にわたる交通規制により、地域や産業に多大な影響を与えていることから、安全を第一にしながら工期を短縮するにはどうしたらいいか?

安全管理

片側交互通行時、一般通行車輌への安全対策は?

品質管理

冬季に現場吹付法枠工を施工することから、モルタルの凍結をどう防ぐ?

写真2

工程のラップ

この現場は高さ(約100m)の割に法枠施工延長(法枠施工幅平均40m)が短く、上下3工区に分かれているため、普通なら1工区ごとの段階的な逆巻き施工になる。しかし、普通にやってたら終わらない。そこで、高さ2mの木製仮設防護柵を各工区の堺に設置した。このことと、始業前の作業班同士の打ち合わせ、上下作業の監視および落石等の見張りを強化することにより、上部作業進捗中に下部での作業も可能になり、工程がラップし工期の短縮が図れた。

付帯工事への対応

本体工事である吹付法枠工の進捗に伴い、並行してやらなければいけない工種や、直前直後にやらなければいけない工種に対して、その都度人員を配置するような体制をとれば必ずどこかでロスがでる。そこで、各種資格、免許を持った3名で「遊撃部隊」(ジプシー部隊ともいう)を編成し、現場に常駐させることで、本体工事にロスを与えず付帯工事も滞りなく済ますことができた。

2台体制

現場前面にある民有地を地権者の好意で確保できたため、モルタル吹付プラントを2基設置し、2班で施工した。また、鉄筋挿入工の削孔機も2台使用し、それぞれ作業効率を2倍にした。

写真2

安全対策

一般車輌への配慮

崩壊土砂を取り除いた後、仮設防護柵を設置して信号機による片側交互通行の規制を行っていたのであるが、この既設仮設防護柵では通行車線への落石をカバーできない部分があった。

前述の木製仮設防護柵である程度の落石はカバーできるものの、通行車線から現場を眺めてみると跳ねた落石をカバーすることはできないように思われた。そこで、既設仮設防護柵の上部に単管、金網、グリーンネットで、落石防護網を設置した。

落石防護網設置前
落石防護網設置前

落石防護網設置後
落石防護網設置後

また、3cmほどある鋼矢板の隙間から破砕岩が飛び出さないよう鋼矢板全体をブルーシートで養生した。

品質管理

寒中施工

モルタルの吹付けが冬季になるため、気温観測を気象庁本川観測所データ、現場事務所付近の風通しのよい日陰、施工個所、の計3か所で行い、そのデータと天気予報(最低気温予報)に基づきモルタル配合時に防凍剤を添加しモルタルの凍結を防いだ。また、施工個所が南向きで日中は直射日光が当たるため、一日の気温差が20℃を超える日もあった。温度変化や、急激な乾燥による収縮クラック抑制のためにポリプロピレン短繊維(マイクロファイバー)を混入した。

施工箇所での気温観測は、実際に構造物が受ける影響を考慮するために行い。その時々にあった対策を施すため。

気象庁データは現場観測データの信頼性を図るためにグラフ化した。

防凍剤添加状況
防凍剤添加状況

ポリプロピレン短繊維混入状況
ポリプロピレン短繊維混入状況

工事を振り返って

受注当初、安全第一はもちろんだが、いかにして工期を短縮できるかがこの工事の命題であった。正直、当初は請負金額からも次年度繰越工事になるだろうと思っていたのだが、発注者から、「なんとか年度内に」との要望があり、「無理!」と思いながら緊張したのを覚えている。

実質5カ月でこの金額の工事を完成させ早期に通行規制を解除出来たことで、地域の利便はもちろん四国の産業振興に少しは寄与できたのではないかと自負している。

発注者側の冷静で誠実な対応、地域住民の理解と協力、当社の現地に即した臨機な対応と協力会社の機動力が融合した、三者の協力体制が確立したことにより、三方よしの施工が出来たと思っている。

おわりに

現在、災害箇所は何もなかったかのように普通に利用されている。

あるものがなくなって普通が不便になると、物理的に、精神的に、どこかで何らかの支障をきたす。普通に戻すことが災害復旧工事の目的であり、その支障を払拭することが私たち施工業者の役目であるならば、その施工業者は、「企業は公なり」の理念に相等するものと思われる。

私たちが真摯に情ある態度で工事に臨むかぎり、いまさら「地域貢献」、「地域のために」、「住民の皆様のために」と改めて謳わなくてもいいのではないだろうか。

ポーズも大事なのかもしれないけれども、ナルシシズムに陥らないよう内面を磨いていきたい。「三方よし」とは、そういうことなのではないだろうか。

最後に、本工事が無事故無災害で竣工したことは公共工事に携わる者として然るべきことながら、成果であり喜びでありました。
ご理解をいただいた地域の皆様、発注者の皆様、協力会社の皆様、その他関係者の皆様、この場をお借りして感謝申し上げます。
ありがとうございました。

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