平成21年度 高知県優良建設工事施工者表彰「高知県知事賞」受賞作
多様な要望に応えつつ いいものを工期厳守で
青木建設株式会社 工務部 井上裕二
本工事は、須崎市西崎町で西崎地区とJR軌道で隔てられた桐間地区とを結ぶ陸橋の下部工を築造するものでした。この場所は数年来、関連の工事が続いており、その影響を受け続けてきた住民の方々の声は、決して好意的なものばかりでなく「 またか ! 」とか「 いつまで続くんや ! 」といった雰囲気が大勢でした。こうした中で、発注者である須崎土木事務所の皆様が粘り強く、丁寧に説得されて「発注後2か月を経てやっと現場着手にこぎつけた」そんな工事でございました。
現場周辺平面図
P3 上部からA1方向を見る
舗装版切断状況
私共が現場で最初に行う作業として、仮囲いを設置する前に舗装版を切断する作業がありました。周囲の方々の信頼を得るには最初が肝心と考え、切断機械は低騒音型のものを使用し、今回はそれに加えて、機械と共に動くサイレンサーを取り付けてエンジン音や切断音の消音を図りました。
工事区域と生活区域とを遮蔽する仮囲いがあり、当初設計では単管を地面に打込み、高さ3mの万能板を設置するものでした。商店主やマンションの住民などそれぞれの立場の違いによって仮囲いの高さへの要望が異なることと台風時の安定性を重要な要素として、高さを3段階に調整できる方式「高さ2mの万能板+防音シート2段を組み合わせた仮囲い」を提案しました。こうすることで、大型機械が稼働している場所は高さを4mに、また作業していない場所や休日にはそれぞれの要望に応じて高さを低くし、地域の声に柔軟に対応しました。
上部防音シート 全閉状態
上部防音シート 全開状態
クローラクレーンに装着した防音壁
場所打ち杭の掘削工法は当初設計では、揺動式でしたが支持層が岩盤であることから、それに対応出来る全回転式に変更しました。これにより振動や騒音の大幅な低減に加え安定した作業が可能となり、工期厳守の条件にも大いに貢献しました。
多勢が参加した消臭剤の実験
着手前に行った地元説明会の場で、場所打ち杭の排土から「悪臭がする」という声があり、事前に消臭実験を行うことにしました。
消臭剤の選定にあたり、実験精度を上げるため、サンプルは現場周辺の水路と汚水処理場から採取したものを使用し、発注者も交えて多人数の感性により選定しました。
場所打ち杭は「杭径不足が起こる」と、よく問題視されていました。
その主たる要因として、掘削機のケーシング径が孔径規格値の最小値であること、軟弱な地盤では、周辺からの圧力が杭径に及ぼす影響が大きいこと、などがあります。
今回は地盤の状態を念頭に置いて、経験豊かな協力業者と充分な協議を行い、掘削機の下に鋼板を敷く、ケーシングをゆっくりと引き抜く、杭頭部の余分なコンクリートの打上げを高くする、など通常行っている対策の外に、杭径不足に直接つながるケーシング先端のビット径を重視し、これに外径が 1cm 大きいものを使用しました。
こうして工事を進めた結果、20本の杭すべてで規格値を満足する製品に仕上げることが出来ました。
場所打ち杭 掘削中
着手前の地元説明会には2か月を要したものの、この間、発注者の一貫した姿勢のもとに徹底して工事内容を説明し、使用設備や段取り等の事例を示し最大限の努力と工夫を約束したうえで「出来ること」と「我慢してもらうこと」を明確にしました。着手後にはその約束を忠実に履行し、進捗状況の説明と人々の思いに関する情報収集を地道に行いました。
こうした取り組みが時の経過と共に住民の方々の理解を得ることに繋がり、工事が円滑に進む最大の要素となり、ひいては労働災害もなく重要構造物である橋梁下部工をほぼ満足できるレベルに仕上げることが出来たと考えております。
現在では橋も開通しており多くの方が利用しています。こうして車が行き来する光景を目の当りにする時、私共はこの橋の工事に携わったことを大変嬉しく思います。
新しい橋が出来たことで交通の流れが大きく変わりました。この道が一般交通の便利さの向上はもとより、周辺に住む人々にとって、安全でより良い生活道として利用されることを願っています。
発注者の皆様、地域の皆さん、協力会社の皆さん、大変お世話になりました。皆様方のご指導とご協力に深く感謝しております。ありがとうございました。
終点側から見る P2,P1,A1
橋を行き来する乗用車や貨物車