当工事は、県道横浪公園線の宇佐地区と横浪半島を結ぶ宇佐大橋における橋脚の耐震補強工事である。宇佐大橋は浦ノ内湾に出入りする漁船等の航路にあたり船舶の往来が多い海域であり、また、周辺には井尻地区集落や漁港そして学校、四国八十八箇所霊場、宿泊観光施設などがあり、付近には迂回路もなく多くの方が通行する重要な道路に架かる橋です。
工事名 | 県道横浪公園線 防災・安全交付金(宇佐大橋)工事 橋脚耐震補強工 橋脚巻立工 N= 1 橋脚(P13) 橋台の高さ H=9 . 6m 橋脚躯体幅 B=4 . 5m コンクリート打設量 V=32m3 |
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当初設計では橋脚に基地台船を設置し、海上より鉄筋・型枠組立を行い、コンクリート打設は交通規制を実施した橋上から打設する計画であった。
海上作業については潮汐による激しい潮流を考慮した作業船の配置、そして交通量の多い県道には通行に配慮した施工計画が求められた。
施工位置図 |
現場海域は潮流が非常に速く、台船を係留する係留アンカーへの負荷が大きいため定点への長期係留が困難であり、また、付近を航行する船舶の航跡波により、台船が揺れてクレーン作業が困難になる為、係留杭設置で基地台船の安定化を図った。
バイブロハンマーによる鋼管杭打ち込み |
係留用鋼管杭設 |
基地台船係留状況 |
《係留杭設置の効果》
基地台船を係留杭で固定することで激しい潮流の影響による揺れを抑制でき、台船上のクレーン作業の安全性、施工性が向上し、また、長期係留が可能となり、基地台船の日々の曳航・係留に掛かる手間を無くしたことで工程の短縮に繋がった。
1〜 6ロットのコンクリート打設の型枠組立からコンクリート打設までの施工サイクル短縮を検討し、全層分の型枠を用意することで、型枠脱型作業を最後の工程に廻して次ロッドのコンクリート打設までの間隔の短縮を図った。
橋脚巻き立て工 |
コンクリート打設サイクル比較 |
6ロット全層分の型枠を用意してコンクリート打設を行うことで、型枠転用・養生期間に伴う工程を短縮することが可能となった。また、基地台船の安定化により1日の型枠組立作業時間が増え、約35日の工程短縮を実現し台風シーズンまでに完成できた。
着手時に既存橋脚の外観を観察したところ海面付近の損傷や劣化が多く見られた為、足場組立後、詳細な調査を実施し、橋脚の劣化や破損個所を発注者に報告、対応策を補修の専門業者を交えて協議を行った。補修方法として下部の劣化や損傷が確認されたコンクリートを除去し、鉄筋の腐食部は防錆処理を実施、橋脚上部の巻立て工の範囲外のクラックにひび割れ注入工法による補修を提案し実施した。
劣化した鉄筋による |
橋脚表面観察 |
クラック調査 |
詳細な現地調査により損傷個所を発見・報告し、速やかに対応策を提案することで補修作業の追加による工程への影響を最小限にとどめることができた。
鉄筋防錆処理 |
ひび割れ補修 |
巻立て厚さは25pと薄く、大径鉄筋が配置された壁内でも確実にコンクリートを充填させる高流動コンクリートを使用し、自己充填性によりバイブレーター作業手間、コンクリート投入箇所へのポンプ配管移動回数を削減させた。
巻立て厚さ25p |
高流動コンクリート・スラプフロー60p |
自己充填性によりバイブレーター作業手間、ポンプ配管移動回数を削減。
打設孔からの充 |
高流動コンクリートの打設 |
高流動コンクリートを使用することで、1回打設あたりのコンクリート打設孔を9か所から3か所に減らすことが可能となりポンプ配管の移動手間や打設孔の閉孔作業が3分の1になり大幅な打設時間の短縮になった。
基地台船とは別に、クレーンを搭載した大型のスパッド(杭)付台船を使用し、コンクリート打設を行うコンクリートポンプ車とミキサー車2台を積載しコンクリート打設を行った。大型台船はスパッド(杭)で船体を固定できるため、潮流に左右される係留アンカー作業の必要が無く、目的の位置に台船をセットして素早く打設を開始することができた。
厳しい作業環境下での施工であったが、発注者との綿密な協議や、地域住民・漁業関係者の皆様のご理解ご協力のおかげで無事故・無災害で台風期までに工事を完成させることができた。また、自社の所有船を持つ強みを活かした取り組みでコストを最小限に抑え、地域への交通影響を無くすこともできた。今後も現地の気象・地形条件と向き合い、工事で得た知識や経験を活かした工事を目指したいと思います。