HOME > 技術論文 >> 困難な施工条件下での課題解決と橋台施工での品質向上の取組み(一般国道494号佐川吾桑バイパス 道路改良工事)

技術論文

真冬の四国カルスト公園 整備奮闘記 (ワンチームから生まれた現場発想)

令和4年度 高知県優良建設工事施工者表彰

株式会社山興 土釜 槙太郎

株式会社山興
土釜 槙太郎


1. はじめに

写真-1 四国カルスト自然公園

写真-1 四国カルスト自然公園

今回施工した「四国カルスト自然公園」は、標高1300mを越える高地にあり、石灰岩石群が不規則に露出し、放牧された牛がのどかに草を食む牧歌的風は、「四国のスイス」とも称されています。そのため、毎年多くの行楽客が、避暑やドライブを楽しみ訪れる県内有数の観光地となっています。
本工事は、その中にある「カルスト学習館」再整備の関連施設整備を行ったものです。


2. 工事概要

  • 工事番号 環自第26- 4 号
    工事名 カルスト学習館再整備外構工事
    発注者 高知県自然共生課
    工事場所 高知県高岡郡津野町芳生野乙4921-48外
    工期 令和3年10月21日〜令和4年3月25日
    駐車場(新設) 370m2 多目的駐車場(改修)=62m2
    歩道開設(景観配慮型)33m
    星降るヴィレッジTENGUへの連絡路=20m
    空石積=208m2
  • 写真-2 カルスト学習館

    写真-2 カルスト学習館(HPより)



3. 施工特性

  • 写真-3 星降るヴィレッジTENGU(HPより)

    写真-3 星降るヴィレッジTENGU(HPより)

  • 今回再整備する「カルスト学習館」は、令和3年7月にリニューアルオープンした宿泊施設「星降るヴィレッジTENGU」に隣接し、観光アクセス道路の「県道383号」は、行楽シーズンや年末年始を中心に、宿泊観光客等の車両が多くなることが予測されました。このため、一般車両や観光客への安全対策と、宿泊者への騒音振動対策が必要となりました。そして、当地は、県内で1、2を争う積雪地帯で、例年50pを超える積雪があるため、冬期の天候予測が難しく、工程管理やコンクリート構造物の品質管理に大きな影響を及ぼす事が懸念されました。
    特に、今回の工事期間は厳冬期にあたるため、過酷な自然環境のなかでの施工を進めていくうえで、様々な課題が発生しました。


4-1 課題1 カルスト自然公園に馴染む空石積と作業の効率化

写真-4 残土場から採取した積石

写真-4 残土場から採取した積石

歩道開設の盛土側擁壁は、当初設計から一般的な化粧ブロック積擁壁ではなく、床掘発生岩と現地採取の石灰岩による空石積となっていました。採取地は他工事の残土場であったため、まずその状況調査を行いました。残土場には、木根と石灰岩塊が土砂と共に埋められた状態であったため、丁寧な選別採取が必要となりま した。
現場作業員との工程打ち合わせでは、盛土側床掘完了後の石積の際、床掘で発生した石灰岩塊を分別、玉掛したうえで、石工による据付作業を考えていました。
しかし、この作業工程では石灰岩塊の分別を行う油圧ショベルオペレーター1人、石材吊油圧ショベルオペ レーター1人、玉掛者2人、石工1人と1パーティ5人での作業となり、作業の省人化と工程短縮が求められました。

#カルスト景観に馴染ませる工夫と工程短縮の検討#

残土場及び、床掘時で発生する石灰岩は、出来るだけ自然面を残して採取することとしました。また、床掘に支障になる石灰岩は、地中部分の大きさが分からないため、露出した自然面を残して、空石積みの一部として利用する計画としました。
空石積みの作業工程計画については、オペレーターおよび若手社員での話し合いを重ねた結果、熟練オペレーターから「過去にバックホウにレンチャーヘッドを用いて空石積をしたことがある」との経験談がだされました。その方法にすれば「バックホウのオペレーターがレンチャーヘッドで積石を選別、掴み並べることが可能になり、オペレーターの省人化が図られる」との結論を得ました。

写真-5 積み石状況

 

写真-6 石張り状況

写真-7 レンチャーヘッドでの作業

写真-7 レンチャーヘッドでの作業

#実施と結果#

残土場からの採取にあたっては、レンチャーヘッドで掴める大きさで、浸食形成された面を丁寧に残し、絡まった木根もそのままで積込み運搬しました
レンチャーヘッドを導入した結果、空石積に要する時間が大幅に短縮され、空石積に予定していた作業員を盛土作業、転圧作業に配置することができ、省人化と工程短縮を達成することができました。

4-2  課題2  厳冬期におけるコンクリートの品質管理

  • 写真-8 現場の積雪状況

  • 空石積が8割ほど完了した頃、また新たな課題が発生しました。暦が12月中ほどになったころ、気象が大きく変わりはじめました。高地ということもあり、早くも雪が舞い初め、日平均気温は0 ℃を上回らない日が続くようになりました。予想はしていましたが、それを遥かに超える「厳冬の到来」でした。実際に、現地までの雪道運転や作業前の雪掻きはもちろん、DTのサイドブレーキが凍り付いたり、BHのキャタピラに付いた前日の土砂が凍り付いて動かなくなっ たりと、大変な苦労がありました。
    当初、コンクリートの転落防止柵基礎は、現場打ちによる施工で可能と考えていました。しかし、この気象条件下では、コンクリートの品質に悪影響を及ぼす可能性があり、変わりやすい高地の天候を予測しながらの工程計画では、不測の事態による工期が遅れる可能性がありました。

#コンクリート品質確保の検討#

社内会議の場で、「厳冬期のコンクリート打設と養生の方法」を話合ったとき、若手社員から「現場打ちは到底不可能に近いので、他の場所で打設を行い現場搬入はできないですか?」と素朴な意見が出されました。その一言で全員「現場で施工できないのなら、自社の倉庫で基礎部を二次製品化して、現場に搬入しよう」という結論を得ました。

写真-9  転落防止柵基礎の二次製品化(打設・締固め・養生)

#実施と結果#

写真-10 雪解け後での基礎設置

写真-10 雪解け後での基礎設置

転落防止柵の基礎を二次製品化するにあたり、まずCADデータで図面を作成することにしました。二次製品ブロックは、転落防止柵の支柱間隔3mに合わせて、単純な延長3mの製品とし、各ブロックの端部には、支柱建て込み用ボイド管を配置して、全体で25基製作しました
現場の雪も溶け、天候も穏やかになったころ、現場に基礎ブロックを搬入し設置しました。製品はシンプルな直線形状でしたが、設置区間内の折点及び変化点は4カ所ほどしかなく、その設置調整には1回の現場打ちで対応する事ができました。その結果、厳冬期下での現場作業を回避するとともに、品質の良いコンクリート基礎を製作据え付けることが出来ました。また、基礎工設置工程も計画通り完了し、全体の工程短縮を図ることもできました。

4-3 課題3 自然配慮型舗装工法の再検討

季節は二月に入り、周囲の雪もすっかり溶け、穏やかな天気が続いていました。次は、歩道舗装の施工でした。当初設計は「マットスタンプ」というコンクリート舗装で、高知市内の1社しか施工できない特殊な工法でした。そのため、遠隔地からの資材搬入時期や、工程調整等が困難となり、他工法での検討が必要と なりました。

#代替自然配慮型舗装工法の模索#

写真-11 提案の自然配慮型工法

写真-11 提案の自然配慮型工法

社内会議で、「自然配慮型舗装」の中で、当初設計と同等の性能を持ち、自社で施工できる方法を話し合い検討しました。インターネット等を用いて模索した結果、「色あい」や「歩行性」が同等で施工が容易な「自然配慮型舗装工法」(ステンシルシート)を探し当て、発注者に提案し承諾を得ることができました。

#実施と結果#

この工法は、はじめに、コンクリートを打設し、表面を木鏝(きごて)で平滑に均します。その上に自然配慮型の型枠(ステンシルシート)を載せてもう一度均したら、当初設計と同じ色あいの色粉を散布し、コンクリートによくなじませます。あとは、1 週間ほどの養生を行ったあとに表面を清掃し完成です。施工も簡単で自社で行うことが可能で、施工計画、管理も容易なため、コスト縮減も図られ、無事に完成する事ができました。

5. おわりに

本工事は、自然公園内で厳冬期に施工するという条件や、特別な工法等により、多くの課題が発生しま た。しかし、どんな課題であっても熟練者や、若手の作業員、全員で意見を出し合いその困難を乗り越える事ができました。熟練の方の経験、そして若手のひらめきによって、目的構造物を高品質、経済的に無事完成させることができました。会社全体が一丸になれたのも、年齢を超えた日ごろからのコミュニケーション、「品質の良いものを作り上げたい」という仕事に対する考え方、などから成し遂げられたものだと思います。この経験から会社も自分も色々な経験ができ成長することができました。今後さまざまな課題に遭遇する と思いますが、会社全体が1 つのチームとなって乗り越えていけると思います。
最後に、私たちのこの工事が、公園や学習館に訪れた方々に、安全で快適に利用されることを心から願っています。