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技術論文

困難な施工条件下での課題解決と橋台施工での品質向上の取組み
(一般国道494号佐川吾桑バイパス 道路改良工事)

令和3年度 高知県優良建設工事

ミタニ建設工業株式会社 有澤 由和

ミタニ建設工業株式会社
有澤 由和


1. はじめに 

一般国道494号佐川〜吾桑バイパスは、国道33号と56号を結び、四国横断自動車道須崎東インターチェンジや重要港湾・須崎港にアクセスする重要な路線である。このバイパスの整備は、高知県中西部への物流や交流を活発にし、地域振興を促すことが期待されている。
当該工事場所は、佐川町と須崎市との境に位置する佐川町側(越知事務所管内)である。(図1)

図1


2. 工事概要

  • 施工延長 L=44.8m
    A 2 橋台(逆T式橋台) N= 1 基
    深礎杭 N= 4 本
    補強土壁工 A=182m2
    軽量盛土工 V=259m3
    土留・仮締切工 1 式
  • 図2



3. 工事の施工特性

  • 施工場所は、道幅が狭隘で見通しの悪いカーブが連続しているうえ、交通量が非常に多いところである。施工位置は、この道路より約30m 下方の急斜面な地形へ深礎杭、逆T 式橋台や補強土壁を築造するものである。(図2)
    ボーリング調査の結果では、斜面の表層は強風化頁岩(D級)からなる地質であり、また支持層上面の傾斜が大きく、橋台の掘削時における現道への影響や、深礎杭の支持層への確実な貫入長の確保が懸念された。また用地の制約もあり、狭隘なヤードでの施工となることから、施工方法・仮設計画の検討も必要となった。さらに橋台の施工位置には、工業用水路および管理用道路があり、これらの付け替え工事においては、濁水防止や水量確保など細心の注意を払いながら施工する検討も求められた。(図3)

     

  • 図3



4-1-1. 仮設計画、施工ヤードおよび施工方法の検討

橋台の施工では、地山の形状や地質が想定と相違したため、工法等の検討に不測の日数を要し、大幅な設計変更となった。しかし、当初の施工方法や計画では工期内での完成が困難であることから、この対策に仮設計画や施工方法などの検討が求められた。
地山土質が脆弱なため、土留・仮締切を設置した掘削作業に変更し、また狭隘な現場条件であることからクレーンヤード(以下、ヤード)の計画が大きく作業に影響すると判断され、下記条件を満たす検討を行っ た。(図4)

図4

1. 作業半径20m・定格総荷重2.0tの能力を必要とし、25t吊クレーンの設置が可能。

2. バックヤードに資材置き場(10m×20m)が確保できる

3. コンクリートポンプ車(100m3/h, 水平打設距離25m)の配置ができる

これらを検討した結果、土留・仮締切の設置ラインや工事用道路A(勾配20%)の最適な配置を計画した。また橋台の施工に際し、踊り場から橋台ヤードまで高低差が13mあることや用水路の付替え位置を@からAへ移設させ、仮設管による埋設と敷鉄板での養生を行い、重機が走行可能な工事用道路B(勾配50%)を計画した。土砂の搬出については、橋台ヤードから直接搬出できないため、踊り場まで不整地運搬車で運び、ダンプトラックに積み替え搬出する計画とした。(図5)

図5

4-1-2. 軽量盛土工の施工方法を検討

軽量盛土の支柱建込については、当初は、ラフテレーンクレーンでのダウンザホールハンマ掘削後に、建て込む計画であったが、狭隘な現場条件なため十分なクレーンヤードが確保できず、大型土のうと盛土によるヤード作りや作業構台設置後に大口径ボーリングマシンで掘削することを検討した。しかし、経済性や工程的に劣るため、支柱の掘削、材料の吊り込みや建込みの一連の作業を1台の機械で施工が可能な「リーダー レス工法」を採用することとした。(図6)

狭隘かつ高低差のある施工条件で、各構造物の仮設計画を作成し、それらを合理的に検討した結果、どの作業でも手戻り・手待ちなども無く効率的に施工ができた。また施工範囲の端部で特に条件の悪い軽量盛土の支柱建込では、多数の機械を搬入することなく施工でき、作業員と機械との接触等の危険性を回避できた。さらに施工能力が高いことや施工ヤードの設置・撤去が不要であったことから、約30日の工期短縮が図れ、工期内完成に大きな役割を果たし、無事故・無災害で施工できた。(図7)

図6

 

図7

4-2-1. 深礎杭の支持層への貫入確認や杭の品質向上

深礎杭の支持層の確認は、深度に到達した段階で、実施済みのボーリング情報(柱状図、コア写真、断面図など)をもとに地質を目視・ハンマー打撃で確認し、同等以上であるかを地質調査技士および発注者と確認した。支持層上面の傾斜は大きかったが、杭ごとに確認を行うことにより、確実な支持層への貫入が行えた。(図8)(図9)

図8

また、坑壁と地山との隙間を完全にコンクリートで充填させ、品質の高い支持杭とするために開口型ライナープレートを採用した。これにより、コンクリート打設と同時に充填が可能となり、地山との空隙をなくし、またグラウトパイプ設置や注入が不要となり、工程短縮(4日)も図れた。(図10)

図9

 

図10

4-2-2. 重要構造物である橋台の品質確保

橋台躯体は、マスコンクリートとなることから、高い品質を確保するために重要構造物としての施工が求められた。(図11)

図11

このため、高知県土木部技術管理課「良いコンクリート施工のための注意点」を参考にして、当該橋台オリジナルの「コンクリート打設・施工管理体制」の計画書(以下、打設計画書)を作成した。打設計画書では各作業責任者(総括、打設、打継、締固めなど)を決め、事前に勉強会を実施し、作業時における注意点の周知徹底を図った。これにより、円滑なコンクリート打設を行うことができた。(図12)

図12

  • 有害なひび割れ防止対策では、誘発目地を2箇所設置することにより、温度ひび割れの発生を防止した。(図13)
    また、乾燥収縮によるひび割れ対策では保湿性の高い養生マットを使用し、少量の散水で長時間の湿潤養生を保ち、鉛直面には高性能皮膜養生剤を塗布し、初期材令の水分蒸発を抑制した。これらにより十分な養生を行え、乾燥収縮ひび割れの発生が防止できた。(図14)

     

  • 図13


図14

  • さらに、せん断補強鉄筋を「機械式鉄筋定着工法の配筋設計ガイドライン」にもとづき、プレート型せん断補強鉄筋を使用し、曲げ加工や重ね継手を減らし、過密鉄筋の解消に取り組んだ。これにより、鉄筋組立・型枠組立の作業効率の向上やコンクリートの充填不良の解消が図れた。
    コンクリート材料では、スランプを「流動性を高めた現場打ちコンクリートの活用に関するガイドライン」にもとづき、8 cm から12cmに変更した。流動性を高めたコンクリートの使用により、締固め作業の効率化や端部・杭頭鉄筋部や開口ライナーへの十分な充填ができた。またコンクリートポンプ車と打設距離が最大約25mと離れていたことからホース内での閉塞が心配されたが、これも無く安定的なコンクリートの供給・打設が行え た。(図15)
    これにより、作業の効率化が図れ、品質の高い橋台が完成できた。

     

  • 図15


4-3-1. 環境対策(水質汚濁防止)への取組みについて

@ハード対策
炭酸カルシウム製造工場で使用される用水路の付け替え時において、土砂等の混入による濁水発生や水量の減少が操業に大きく影響を与えることが懸念され、これについての対策が課題となった。(図16)

図16

この対策には、立木を利用した落石防護ネットの設置(図17)や敷鉄板での養生(図18)で水路の破損や土砂の混入を防いだ。掘削などの作業中は、場内排水を1 箇所に集め、仮設パイプにより排水系統を分離し排出することで、用水路に濁水などが混入しないようにした。(図19)

図17

 

図18

図19

 

 

  • さらに、用水路の切替え作業は、手作業で丁寧に行い(図20)、スクリーンを設置し(図21)、ゴミなどの混入によるパイプの閉塞が起こらないようにした。
    用水路の管理用通路は、単管パイプとステップにより迂回路を設置し、工事期間中でも用水路の点検が行えるようにした。(図22)

    図21

    用水路の重要性を作業員への周知徹底し、掘削 作業中は落石などの無いように丁寧な作業を行 い、土砂等の混入や濁水、水路の閉塞、水量の減 少などの発生を防ぐことができた。管理用通路が 常時使用できることで、降雨時でも、事前の対策 や対応が迅速に行えた。
  • 図20

    図22

4-3-2. 環境対策(水質汚濁防止)への取組みについて

Aソフト対策
用水路や管理用通路の注意事項を「現場危険箇所マップ」に明示し、新規入場者の教育や掲示板に掲げることにより、作業員へ周知徹底に取り組んだ。(図23)さらに現場に「みまわり伝書鳩」を設置し、気象情報をリアルタイムに収集・活用し、降雨前の点検、降雨中のパトロールや降雨後の点検を迅速にできるよう取 り組んだ。(図24)
これらの取組みにより、工事期間中、工業用水の利用者からの苦情は一切無かった。

図23

 

図24


4-4. 魅力ある職場づくり

  • 地域建設産業の持続性確保による担い手不足への対応として、将来の建設業界を担う若手に建設事業と建設技術を理解してもらうことや職場環境の改善が課題である。
    まず、建設産業が地域の守り手として持続的な役割を果たしていくためには、若者をはじめとする担い手確保・育成が重要である。インターンシップよる職場体験学習において、高校生・高専生・大学生( 8 校10名(うち女性2 名))を積極的に受け入れ、建設事業と建設技術について理解してもらうことに取り組んだ。(図25)
  • 図25


さらに、女性目線でのパトロールを定期的に行い、現場の安全対策や作業環境の改善に取り組んだ。女性目線での「気づき」により、事務所・休憩所や現場において、安全・快適に働けるようなアドバイスを行い、環境改善が図れた。これらを社内で情報共有、フィードバックすることにより、他の現場環境の改善に寄与した。(図26)

図26

5. 最後に

  • 厳しい施工条件のもと、濁水などの環境対策については、細かな配慮が必要でしたが、発注者、工場関係者や道路利用者の方々のご理解とご協力により、無事に無事故・無災害で工事を完成することができました。(図27)
    私どもの工事が早期の国道494 号佐川〜吾桑バイパスの完成供用の力添えとなれば幸いです。
    今回の現場で得られた知識や経験は今後の現場に活かし、さらには若手にも技術の継承を行っていきたいと思います。

     

  • 図27