平成29年度高知県優良建設工事施工者表彰
株式会社 富士建設工業 山本 純平
今回施工した神田川上流の針木本町地区では、これまで台風や大雨の度重なる水害によって幾度となく冠水や浸水被害を受けてきた。 地元住民からは水害により損傷を受けた旧護岸の耐久性や、増 時の洗掘による護岸崩壊等を懸念する声があがっており、未改修区間である護岸の早期整備が望まれていた。
本工事は、擁壁護岸工L=50.0m河川全幅を仮締切りし、河川水を常時水替えしながら仮桟橋上より締切内を河床掘削(V=826) し、底版構築後(W=5.4m・V=136) に自然石残存型枠を用いて側壁(h=約3.5m) を施工するという内容であった。
施工箇所は、閑静な団地内にあり、地元説明会では工事の早期完成、施工中の騒音低減を要望する声が多数挙がり、加えて発注者からは河川の環境保全(濁水対策) を確実に実施する事を指示された。
底版・側壁の施工を規定通り千鳥施工で行った場合、止型枠脱 型までの日数がロスとなる。
このロスを解消する為に、止型枠に永久埋設型枠(スピード・ フォーム工法) を採用し隣接スパンを連続施工できるようにした。
結果、底版・側壁の施工で約12日の工程を短縮することができました。
設計では、掘削深さ約5.5mの河床掘削作業を、全幅6m、主桁が縦断方向に2m間隔、切梁が4m間隔に設置された仮桟橋上から行うものとなっていた。
この条件では、縦断方向にバックホウを使用しての掘削は不可能であり、横断方向の掘削も設計の 0.45級バックホウの最少掘削半径が締切幅を超える為、不可能と判明した。
この問題を解消する為、小型バックホウとラフタークレーンやテレスコピック式バックホウとの併用など施工機械の変更を検討したが、施工速度や、機械調達に懸念があるとして見送り、最も施工速度の速い0.45級バックホウによる施工が有利と判断し、同機で施工できるよう仮桟橋に沿った工事区域内の管理道に覆工板とコンクリートブロックを組合せた仮設架台を設置した。
これにより重機足元の支持と掘削作業半径を確保出来た事で、0.45級バックホウによる横断方向での掘削が可能となり作業効率が上がった結果、約14日の工期短縮と経費の削減に繋がりました。
仮設架台掘削状況 | 仮設架台設置状況 | ||
地元説明会で意見の多かった、工事で発生する騒音を極力減 らして欲しいとの要望に対しては主に次の様な対策を実施した。
桟橋上3m毎にある開口部養生鉄板と覆工板の間にゴムシー トを設置し、重機・車両通行時の衝撃音低減を図る。
河床掘削時に発生する濁排水について、発注者から出来るだけ下流域へ拡散しないよう要請があった。 この課題に対しては、濾過効果の高い環境配慮型濁水処理フィルターのバイオログフィルター(NETIS 登録QS-100035-V) と建設副産物の木材チップをメッシュ袋に入れたフィルターを作製して工区下流に 濾過施設として設置し、水質汚濁の防止・濁排水の流出防止を図った。
濾過施設のフィルター効果は非常に大きな効果を発揮し、十分に濾過して排水できた結果、工期を通 して工区下流域から濁水に関する苦情や問合わせは一切ありませんでした。
本工事の底版部の施工は冬季の施工となり、河川内を冷たい北風が吹抜けるという自然条件であった。コンクリートの初期乾燥収縮や凍結などを防いで品質を確保する為に、以下の取組みを行った。
これまで当社は針木本町における本事業を5件受注させて頂きました。
今回の工事中、懸念された騒音その他の苦情はありませんでしたが、これには上記の対策等の結果だけで は無く、地元の方々のご理解とご協力そしてこれまでの工事に携わってきた当社担当者が地元の方々と築き 上げてきた信頼関係があったからこその結果であると感じました。
この工事を終え、たとえどんなに優れた計画や技術、機械があっても地元、発注者の方々の理解や協力、 信頼が得られなければ、本当に良いものは築けない、三者の信頼関係が成り立ってこそそれぞれが良いもの、 望むものを得られるのではないかという思いを深くしました。
本工事で優良賞を頂けたのは、ひとえにこれまでの積み重ねの結果からもたらされたものだと考えており ます。
最後にこの場をお借りしまして、地元と発注者の皆様、本件に協力頂いた皆様に感謝を申し上げます。