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技術論文

平成18-19年度 長池橋補強工事

ショーボンド建設株式会社
高知営業所 田渕 誠志

1.はじめに

本橋は国道56号線、四万十市市街近郊で、保育所、民家が隣接していました。本工事において一番に配慮したことは、その保育所、民家また、一般通行車両への影響(騒音、粉塵、通行制限)を最小限に抑え進捗させることでした。

「近隣住民に感謝してもらえる工事にしよう、公共工事に対し好印象を持ってもらおう。」それを念頭に置き工事を施工しました。

写真1

工事概要

本橋は昭和47年度に建造された橋梁であり、改修計画で国道の4車線化及び中村インターチェンジ取付道との交差点に位置しています。その計画に伴い、本橋に作用する荷重条件が変更される為、橋梁の主桁増設補強(総延長延長54m、総重量44t)を目的とした工事でした。

別途、耐震補強として落橋防止装置(18基)、変位制限装置(18基)、現場塗装(Rc-1系)、床版補修工(断面修復工、炭素繊維接着工)、他タ1橋の側道橋架設工を含む工事内容でした。

まず足場組立の際、枠組み足場を利用した防音・防塵壁を保育所側に設置し、騒音作業下での騒音レベルを監視しました。また保育園児の昼寝時間である12時30分から14時までは騒音作業を休止しました。重ねて、工事に対するイメージアップを図ろうと保育所に合意を得て園内で工事の説明を兼ねた 交通安全教室を開催しました。

写真2

写真3

主桁増設はA1橋台-P1橋脚間(42.6m)桁高2.8m、下フランジ厚50mm、これを5分割して現場に搬入し、地組して張出し床版の下に架設する工事でした。(支承無し、既設主桁と連結する構造) 増設桁架設に先立ち、ベントを架設しますが、当初設計のままの施工では問題がありました。一つはベント設置により作業ヤードが占領されラフタークレーン等の車両が出入りできなくなり、架設から解体までラフタークレーンを作業ヤードに据付けた状態となることです。

また、通行規制での路上からの取り込みは大型のラフタークレーンが必要となります。二つ目は橋台部にコンクリート基礎が必要となりアンカー定着用の削孔が削岩機では騒音、粉塵を発生させてしまう為、コアドリルによる削孔が必要になります。

これらのことはすべて工事費の増加となります。コスト低減を図る為、社内で応力照査は当然のことながら施工性、安全性の検討を綿密に行い、従来の組立ベントに替え既設主桁部からの吊り下げ方式を施主に提案し、協議を行い採用して頂きました。その結果、工事コストの低減はもとより、一般通行車両への影響が無くなりました。

吊り下げ方式ベント桁架設状況
吊り下げ方式ベント桁架設状況

桁架設後、新設桁の著しい揺れを確認しましたので、直ちに社内で検討を行いました。その結果、部分的に張出し床版と新設主桁も上フランジをエポキシ樹脂で合成すること及び、両端支点部に簡易な桁受け支承を設置する方法を提案し、創意工夫として実施しました。

写真4

落橋防止装置工・変位制限装置工は鋼製ブラケットでの耐震補強です。

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現場塗装工では本設計のRc-1系塗装は、全面ブラストによる素地調整による塗り替え仕様で、その研掃材が硅砂となっていました。作業者の硅肺等による健康被害防止の為、また粉塵発生を抑える為に、他の研掃材と試験施工を実施し、ガーネットでのブラストに変更して作業しました。

現在、土木コスト情報でブラスト作業の標準歩掛かりとしてガーネットが計上されています。私自身、いい判断ができたと思います。

床版補修工は足場仮設後に床版の損傷が確認できたので自主的に詳細調査を実施し、補修案を検討し、施主と協議を行った結果、コンクリート欠損部、脆弱部はポリマーセメントモルタルによる断面修復工、ひび割れ補修については炭素繊維シート接着工を施工することになりました。

中でも、一番苦労したのは現場塗装工も含め、粉塵飛散防止対策の為、ほぼ密閉された状態での施工であったことです。時期が夏真っただ中で、吸・排気装置は設置したものの内部の暑さは作業員にとって非常にしんどかったと思います。現場には熱中症予防為、スポーツドリンク、冷却キャップ、塩飴、梅干し、氷を入れた浴び水を設置しました。作業員の皆さんには浴び水が好評でした。

写真6

別工事箇所の側道橋架設は途中追加されました。工事内容は他橋の側道橋をリサイクルで再加工し、供用されている橋に新設するものです。この工事も長池橋と同様現場塗装があったので工期内に納められるかが心配されたのですが、天候に恵まれ無事完工できました。

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工事を振り返って

工事途中に園児から工事現場の絵を多数贈られ「工事のおじちゃん、ありがとう」と言われたときは、この工事に関われて本当に良かったと思いました。

施工内容に関しては特別なことはしていないと私は思います。通常、当社が行っている管理、技術、ノウハウにより会社全体が一つの現場を完了させるという認識、問題が発生したとき社内一丸となって対処する姿勢が施主に認められ、今回の評価につながったものと考えます。何より無事故、無災害で完工できたことが良かったと思います。

おわりに

発注者関係、地域住民、関係諸団体ならびに協力会社の皆様方のご指導とご理解・ご協力の程、深く感謝しております。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

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