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技術論文

26災第1320-8-2号 県道高知安芸自転車道線道路災害復旧工事について

平成28年度高知県優良建設工事施工者表彰「高知県知事賞」

有限会社山中建設 和田 英明株式会社山本建設 
主任技術者 山本剛平


1.施工特性

当工事は平成26年に発生した波浪により崩壊した自転車道の路側を復旧する工事である。施工延長は254.9mであり、基礎捨石(10〜200kg)・被覆石均し(1t)を施工し、それを基礎として12tの根固めブロックを1,018個、大型クレーン船により運搬、据え付けるものである。

2. 工事概要等

平成27年台風到来(11号・7月14日)

現場周辺は年間を通じて波浪が強いため施工中の波浪対策が求められる。(もとの護岸も波浪により崩壊した。)

完成後の波浪による再度被災を防止するために、根固めブロックを堅固に噛み合わせるなどの、高精度かつ高品質にて施工することが求められる。

施工現場付近の海面はパッチ網の操業が盛んで、施工中には漁業関係者への配慮が必要である。

現場の背後には土佐くろしお鉄道が走っており、施工中の安全確保等の配慮が求められた。

当工事付近は最大4工事が平行して施工を進めていること、現場への出入り口が1箇所しかないことから、綿密な工事間調整が必要である。

災害復旧全体(施工前)
平成26年度被災直後

3.被覆石均し用特殊アタッチメント装着バックホウ使用

(想定されるリスク)

従来の施工方法としては、重量1tの石材をラフテレーンクレーンにより吊りこんで、人力にて微調整しながら据え付けていく。石材と人の挟まれ事故等の危険性が高いこと、施工期間が長期に及び、その間に波浪を受けた場合に崩壊等の手戻りが発生する。

(リスク解決策)

施工時の安全性を確保すること、波浪のリスクを低減するために短期間で施工することを目的として、基礎捨石・被覆石均しにおいて、特殊な建設機械を導入した。360度回転する特殊アタッチメントを装着したバックホウ2台を使用することで、被覆石均しの施工速度を向上させた。また、バックホウ+人力施工では困難である、堅固な噛み合わせと平坦施工を図った。

効果


  • 当初73日の予定の作業を、23日で完了させた。高精度、堅固な噛み合わせを確保し被覆石均しが短期間、かつ安全に施工でき、出来形管理規格値50%以内も達成した。根固めブロック据付の高精度・高品質施工に繋がった。
  • 12月10日の荒天による波浪が発生したが、すでに法面部の被覆石均しが完了していたため崩壊を免れた。被覆石均しが短期間で施工できたため、また、根固めブロック据付も早期(2月1日)に完了できた。結果的にその直後に発生した2月13日・20日の荒天による波浪による影響も回避できた。

4.施工中の応急的な波浪対策

2期施工(被覆石均し・法面部)の終了した直後の、12月10日に荒天が予想され、波浪により被災する恐れがあったため独自に判断して、川北海岸にて製作済みの消波ブロック73個を現場に急遽運搬して、施工区域の保護として据え付けた。

効果



  • 3段階施工により、基礎捨石・被覆石均しの2期施工を早期に完了していたことと、独自の判断による消波ブロックを使用した防護措置を行ったことから、荒天時の波浪による被災を防止できた。
  • 波浪による埋塞が最小限で済んだため、洗掘防止マットの継ぎ目を傷つけることなく、容易に除去し早期に復旧でき、3期施工にスムーズに移行した。

5.石材運搬・投入・均し作業における工期短縮

(想定されるリスク)

基礎捨石と被覆石均しを一体的に施工した場合、使用する機械と材料が相互に異なるため、作業が輻輳し、安全性や施工性の確保が問題となった。また、洗掘防止マットにおいて作業の輻輳により継ぎ目の施工が不十分となり、完成後の波浪に対する弱点となることも想定された。

(リスク解決策)

3段階施工とすることで、作業の輻輳を回避し安全性と施工性を確保した。併せて工程短縮も図った。 洗掘防止マットの継ぎ目については、各段階において大型土のうにより継ぎ目を保護することで確実な施工を図った。
3段階の分割施工では洗掘防止マットの継ぎ目が弱点となるため、大型土のうを用いて品質を確保した。

"東西に分かれた石材施工の被災リスク軽減と効率的な作業手順を提案!"


効果


  • 3段階施工により、作業の輻輳を解消し、安全性や施工性を確保できた。
  • 東西の施工箇所も同時に施工できたことにより工程が短縮された。また、このことにより施工中の波浪による崩壊等の手戻り作業のリスクを回避できた。
  • 洗掘防止マットの継ぎ目について、大型土のうを設置することにより、ラップ箇所がきれいな状態にて保持され、確実な施工と作業効率が向上した。

6.鉄筋設置時のかぶり厚さ確保

根固めブロックの塩害対策として、根固めブロック製作時、鉄筋が沈下、横移動しないように固定し、かつ打設完了後に、取り外せる吊鋼材を、自社で製作した。これにより横方向、縦方向のかぶり厚さを確保すことができ、ブロック製作1個当り、最大16箇所のスペーサーブロックを排除することが可能となり、作業効率が大幅に向上した。 あわせてスペーサーブロックをなくした事で、より密実なコンクリートとなり、根固めブロックの塩害対策となった。

7.ブロック据付模型を用いた入念な施工打合せ

  • 根固めブロックの重量が12tと大きいため、堅固な噛み合わせと出来形が確保できなった場合には、波浪による再度被災を受ける可能性がある。根固めブロックの出来形を高精度にて確保することを目的として据付現場の地盤にあわせた模型を製作して、ブロック模型を用いて、メーカー担当者と据付モデルを検討し、ブロック同士の噛み合わせ、断面当りの必要予定個数、形状の打合せを実施した。
  • 決定したモデル案について据付合図者、クレーンオペレーターを交えた模型を使用しての打合せにより、施工方法・施工手順の決定や、基準高の目標物設置及び法線位置等の細部にわたる打合せを実施した。

効果

  • 六脚ブロック12t型1,018個を計画据付モデル通り噛み合わせ良く、過不足なく規則的に据付でき、美観、出来栄えの良い据付で、かつ安全に配慮した作業が出来
  • 精度の高い据付を達成したことから、出来形管理規格値50%以内を達成した。
  • クレーンオペレーター、合図者間での連携強化安全性、作業性の向上。

8.空撮を用いたブロック製作・据付ヤード計画及び進捗管理

  • 川北海岸製作ヤードには、他工事発注のブロックが混在しており、製作場所と仮置き位置を検討し、狭いヤードを有効利用する必要がありました。また、ブロック製作後の、仮置き位置を決めるため、日々変化する汀線位置を把握し、台風・高波時の影響を考慮することで、ブロック仮置き位置を決定しました。
  • 現場の進捗管理として空撮を月2回実施した。

まとめ(災害復旧全体を総括して)

本工事は民家、鉄道に対して非常に隣接した位置での災害復旧工事であり、地域住民・関係者の生活、安全を守る重要な工事であるということを理解し、全社を上げて取り組みました。対外面として地域住民・土佐くろしお鉄道・漁業関係者の工事理解と調整が必要でした。また施工面として、当工事を含め4業者(県発注3件・市発注1件)となり、施工開始にあたり、多大な調整と綿密な打合せが必要でした。以上の課題に対して、輻輳する対外関係を良好かつ円滑に保つよう働きかけ、それらを積み重ね、行動することにより、円滑で早急な工事完成に繋がりました。結果、当工事はもとより、他工事の工程もスムーズに運び、工期内に全工事が無事に施工を完了しました。このような災害復旧工事に関われたことは、土木技術者として貴重な経験になったと共に、改めて公共土木という仕事に誇りを持つことができました。

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