平成28年度高知県優良建設工事施工者表彰「高知県知事賞」
株式会社山本建設
主任技術者 山本剛平
当工事は平成26年に発生した波浪により崩壊した自転車道の路側を復旧する工事である。施工延長は254.9mであり、基礎捨石(10〜200kg)・被覆石均し(1t)を施工し、それを基礎として12tの根固めブロックを1,018個、大型クレーン船により運搬、据え付けるものである。
平成27年台風到来(11号・7月14日)
・現場周辺は年間を通じて波浪が強いため施工中の波浪対策が求められる。(もとの護岸も波浪により崩壊した。)
・完成後の波浪による再度被災を防止するために、根固めブロックを堅固に噛み合わせるなどの、高精度かつ高品質にて施工することが求められる。
・施工現場付近の海面はパッチ網の操業が盛んで、施工中には漁業関係者への配慮が必要である。
・現場の背後には土佐くろしお鉄道が走っており、施工中の安全確保等の配慮が求められた。
・当工事付近は最大4工事が平行して施工を進めていること、現場への出入り口が1箇所しかないことから、綿密な工事間調整が必要である。
災害復旧全体(施工前) |
平成26年度被災直後 |
従来の施工方法としては、重量1tの石材をラフテレーンクレーンにより吊りこんで、人力にて微調整しながら据え付けていく。石材と人の挟まれ事故等の危険性が高いこと、施工期間が長期に及び、その間に波浪を受けた場合に崩壊等の手戻りが発生する。
施工時の安全性を確保すること、波浪のリスクを低減するために短期間で施工することを目的として、基礎捨石・被覆石均しにおいて、特殊な建設機械を導入した。360度回転する特殊アタッチメントを装着したバックホウ2台を使用することで、被覆石均しの施工速度を向上させた。また、バックホウ+人力施工では困難である、堅固な噛み合わせと平坦施工を図った。
2期施工(被覆石均し・法面部)の終了した直後の、12月10日に荒天が予想され、波浪により被災する恐れがあったため独自に判断して、川北海岸にて製作済みの消波ブロック73個を現場に急遽運搬して、施工区域の保護として据え付けた。
基礎捨石と被覆石均しを一体的に施工した場合、使用する機械と材料が相互に異なるため、作業が輻輳し、安全性や施工性の確保が問題となった。また、洗掘防止マットにおいて作業の輻輳により継ぎ目の施工が不十分となり、完成後の波浪に対する弱点となることも想定された。
3段階施工とすることで、作業の輻輳を回避し安全性と施工性を確保した。併せて工程短縮も図った。 洗掘防止マットの継ぎ目については、各段階において大型土のうにより継ぎ目を保護することで確実な施工を図った。
3段階の分割施工では洗掘防止マットの継ぎ目が弱点となるため、大型土のうを用いて品質を確保した。
"東西に分かれた石材施工の被災リスク軽減と効率的な作業手順を提案!" |
根固めブロックの塩害対策として、根固めブロック製作時、鉄筋が沈下、横移動しないように固定し、かつ打設完了後に、取り外せる吊鋼材を、自社で製作した。これにより横方向、縦方向のかぶり厚さを確保すことができ、ブロック製作1個当り、最大16箇所のスペーサーブロックを排除することが可能となり、作業効率が大幅に向上した。 あわせてスペーサーブロックをなくした事で、より密実なコンクリートとなり、根固めブロックの塩害対策となった。
本工事は民家、鉄道に対して非常に隣接した位置での災害復旧工事であり、地域住民・関係者の生活、安全を守る重要な工事であるということを理解し、全社を上げて取り組みました。対外面として地域住民・土佐くろしお鉄道・漁業関係者の工事理解と調整が必要でした。また施工面として、当工事を含め4業者(県発注3件・市発注1件)となり、施工開始にあたり、多大な調整と綿密な打合せが必要でした。以上の課題に対して、輻輳する対外関係を良好かつ円滑に保つよう働きかけ、それらを積み重ね、行動することにより、円滑で早急な工事完成に繋がりました。結果、当工事はもとより、他工事の工程もスムーズに運び、工期内に全工事が無事に施工を完了しました。このような災害復旧工事に関われたことは、土木技術者として貴重な経験になったと共に、改めて公共土木という仕事に誇りを持つことができました。