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技術論文

地震高潮第6-7号  国分川外地震高潮対策工事について

平成27年度 高知県優良建設工事表彰

有限会社山中建設 和田 英明入交建設株式会社 土木部主任 横井 靖久


1. はじめに

本工事の施工箇所は、高知市北久保の国分川と久万川の合流地点付近であり、高知県の防災マップによると、最大クラスの地震が発生した場合の予想震度は、6強、液状化の可能性は中程度、津波浸水高は2〜3mが想定された場所であります。  
南海地震対策の一環として高知県が現在進めている地震高潮対策事業は、予想される堤防沈下に備えるため、既存の堤防に鋼矢板を二重に圧入し、大地震で津波が発生した場合、既存の堤防は多少損傷を受けることが想定されるが、矢板内の堤防はほとんど損傷を受けません。このことにより、後の速やかな復旧作業が可能となります。

2. 工事概要等

本工事は、その地震高潮対策事業の一部で、既設護岸に約13mの鋼矢板を非液状化層まで二重に圧入し、矢板上部を固定する笠コンクリートと堤防天端を補強するコンクリート舗装を行う工事でした。  
本工事の特性として、地域の方々の生活道である堤防道路を全面通行止めにしての施工と、冬季の風や気温低下に対するコンクリートの寒中施工の工夫が必要でした。 そのため、本工事では全面通行止めの早期開放を目指し、狭隘な施工ヤードの工夫による工程短縮や、寒中コンクリートに対する様々な工夫など、施工計画段階から取り組みました。

施工箇所位置図

3. 具体的な工夫

@防護施設を兼用した安全通路

本工事施工箇所周辺は、商業施設やマンションが多数あり、工事中の粉塵対策が必要でした。また、工事特性より土工作業・既設構造物撤去・鋼矢板圧入作業・コンクリート舗装等の重機稼働スペースなどの施工ヤードとして堤防道路全面が使用されるため、作業者の通行スペースが無くなり、施工時における作業者の安全確保が懸念事項としてありました。
そのため、全工程においての防塵対策と工事全域を安全に通行できる安全通路を兼ね備えた施設、『防護施設を兼用した安全通路』(写真−1)を設置しました。  
『防護施設を兼用した安全通路』は施工箇所の外側の堤防法肩に設置し、周辺環境への配慮と安心できる景観を作ることができました。

写真−1 防護施設を兼用した安全通路

A狭隘な施工ヤードにおける工夫(鋼矢板圧入施工)

本工事は地域住民の生活道として利用されている道路を全面通行止めにしての施工であるので、早期開放が望まれ、そのためには、主要工種である鋼矢板圧入施工の早期完了が肝要であると考えました。
鋼矢板圧入施工前に、下請業者(鋼矢板圧入業者)と入念な打合せを行い、日々の施工量を設定して、それに見合う施工機械の選定(設計25tラフタークレーン⇒施工35tラフタークレーン)を行いました。施工順序として鋼矢板圧入箇所は先行して深さ1.5m〜1.6mの床掘掘削する必要があったため、狭隘な箇所でのクレーンヤードの確保に苦慮していました。   
床掘掘削後、クレーンのアウトリガー張出は4.5m程度の中間張出しか出来なく、作業半径が小さくなり、クレーンの据付回数が増え工程や作業効率もあまり条件が良くありませんでした。   
そこで、1日の施工量でクレーンの据替を1回に限定して、施工量を達成するため、アウトリガーをより張出が出来るような工夫をしました。

図−1作業計画図(平面図)
図−2作業計画図(断面図)

その方法として、すでに掘削している床掘内に作業架台を製作して設置し、アウトリガーの足元を支持できるようにしました(図−1及び図−2)。このことにより、張出幅は4.5mから6.3mとなり、作業半径を大きく確保することができ(写真−2及び写真−3)、1日の施工も余裕を持ってできるようになりました。

写真−2 施工状況(作業架台設置)
写真−3 作業架台(2基)

このことにより、工程や作業効率だけでなく、安全性も向上し、安定した工程進捗が確保できました。

B寒中施工における様々な品質向上(寒中コンクリートの施工)

本工事施工箇所は、国分川・久万川沿いにあり、河川沿い特有の風を受ける環境条件下でしたので、初期の乾燥ひび割れの防止と凍害防止対策が必要であると考えました。また、冬季に施工するコンクリート舗装工については、寒中コンクリートの施工として取扱う必要があったので、コンクリートの品質確保に留意して施工管理を行いました。

具体的な品質管理として、

  1. コンクリート使用前の生コン工場の設備等確認
  2. 配合変更(18-8-40BB→21-8-40BB→24-8-20N)   
    早期強度の確保や凍害防止のため、高炉セメントから初期強度の発現が可能な普通セメントへの変更
  3. コンクリート内部の水分逸脱を防止するための路盤シートの設置
  4. コンクリート養生方法(乾燥ひび割れ、初期凍結防止)
    (ア) 乾燥ひび割れ防止対策として被膜養生剤の散布
    (イ) 打設日当日のブルーシート、投光器、ジェットヒーターによる保湿養生(写真−4 及び写真−5)
    (ウ) 打設日2日目からブルーシート、気泡緩衝シート(プチプチシート)による保温・ 湿潤養生
    (エ) コンクリート表面を常時湿潤状態にするため工事区域全体に水道設備の配備
  5. 写真−4 保温養生(工事区域全体)
    写真−5 保温養生(シート内)
  6. 保温養生の効果確認のため、データロガー(温度計)でコンクリート全体の温度をリアルタイムで管理

以上のことに留意して施工管理を行った結果、出来栄え及び品質的にも良いコンクリート舗装を仕上げることができました。


4. おわりに

ほかに、地元小学生に対して地震対策の出前授業や工事の見学会を開催し、報道関係機関にも取上げられ、多くの方々にこの事業について知ってもらう事ができました。また、先に述べた工夫を計画し、実行した結果が高い評価に繋がったと思います。関係各位の協力に感謝を述べ、今後も工事に関する品質・出来形・工程管理等に注力し、安全第一で工事施工に携わる所存です。

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