平成26年度 高知県優良建設工事施工者表彰
有限会社山中建設 和田 英明
当工事は、異常降雨により崩壊した山腹をコンクリート土留工5基及び法切工にて山腹安定を目的とした工事です。
施工箇所が四国山脈に位置する標高600m付近の風の吹きぬける渓間部であり、コンクリート工の施工時期が11月〜3月と冬季の予定でした。
着工前
(課題)当工事箇所を調査した結果、多数の湧水があり、切土高さ5mに及ぶ土留工の背面掘削時の土砂崩壊が危惧された。
(対策)土留工背面掘削時に300mm程度余分に掘削し、背面側掘削完了と同時にコンクリートを設計掘削線に沿って打設し、不安定土砂をコンクリートにより安定させた状態で床面の整正を行い、土留工の施工に取り掛かりました。
仮設土留コンクリート設置完了 |
(効果)仮設土留コンクリートを施工することにより、約2週間に及ぶ各土留工の施工期間中土砂崩壊による作業員の人命に係わる事故・土留工施工中の崩壊による手戻り作業が無く工程の進捗の確実性及び軟弱地盤下での構造物施工の安全が確保できました。
本工事箇所は冬季では日中でも氷点下となる施工条件であったため、コンクリート構造物施工時の温度管理がコンクリート構造物を施工する上での重要な課題でした。
(対策)コンクリート荷卸し地点から打設箇所まで約80mをケーブルクレーンによる運搬が必要であった為、コンクリートバケット(搬器)にマザコンシートを取り付け運搬時の温度低下の低減を図り、型枠投入直前のコンクリート温度が5℃を下回ってないことを確認して打設を行いました。
温度測定用コンクリート採取状況 |
コンクリート打設状況 |
コンクリート打設完了後は、速やかにブルーシートで型枠全体を覆い、投光機及びジェットヒーターを2台設置し養生を行いました。また養生時の温度確認を確実に行うため、自動温度記録計をコンクリート露出面に設置し、作業中・夜間と養生温度を記録し養生限界温度を下回ってないことを確認しました。
養生温度測定グラフ |
夜間温度測定状況 |
作業中温度測定状況 |
(効果)寒中コンクリートとしての保温・給熱養生をコンクリート打設日から12日間適切に行った結果、凍害による強度低下やひび割れもなく、高品質なコンクリート構造物を施工することが出来ました。
また、養生温度測定結果を品質管理資料に添付したことで発注者の信頼も得ることが出来ました。
(課題)本工事の山腹法切工では切土法長が最大で24.0m、法面保護工の面積が約2,000m2ありました。当工事箇所は標高が600m付近の工事であり、冬季の夜間には気温が氷点下になります。その為、夜間に霜柱が10cm程度伸び、昼間温度が上がると浮き上がった斜面土砂と共に崩落する現象がおきていました。
霜柱状況 |
霜柱状況 |
霜柱状況 |
(対策)法面調査の結果、植生マットを金網で押さえ込む植生基材マット工が採択される予定でしたが、様々な工法を検討した結果、霜柱対策として『植生マット工+木製法枠工』を提案し施工することとしました。
(効果)『植生基材マット工』と『植生マット工+木製法枠工』のコストを比較した結果、1.0m2当り約1,100円程度のコスト縮減となり、全体で約340万円程度の工事の削減につながりました。
木製法枠工を施工するに当たって枠材の美観を確保するために、設計ではφ9cmの間伐材を使用することになっていたが、φ15cm以上の丸太を使用し、遠くからでも枠材がはっきりと確認でき出来ばえの向上に努めました。また、枠材のジョイント部である補助丸太材をφ200の加工木材を使用することで、補助丸太のばらつきを無くし、2.0mの枠材が容易に設置出来、施工性が飛躍的に向上し、通りの良さの確保にも成功しました。
正面からの写真を作業終了ごとに日々撮影し、枠材の通りの確認を行い、修正し続けた結果、通りの良い木製法枠工を施工することが出来たと自負しています。
木製法枠構造図 |
補助丸太材 |
施工状況 |
土木工事では一現場ごとに日々自然を相手にした対処を求められます。その為、常に安全・安心して施工が行える様、現場に適した工法を考え実践することが無事故・無災害で工事を完成させる第一歩だと考えています。
最後になりましたが、この度お世話になった高知県中央東林業事務所の監督職員様並びに関係者様のご指導・ご鞭撻及び、地域の皆様のご理解、ご協力を得て無事故・無災害で工事を完成させることが出来ました。この場をお借りして感謝を申し上げます。これからも『安全は全てに優先する』をモットーに今後も努力し続けていきたいと 考えています。
拙い稿でしたが、最後までお読み頂きありがとうございました。