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技術論文

県道奥西川岸本線地方道路交付金工事

入交・南国建興JV
入交建設(株)土木部 十亀 敏忠

はじめに

当工事では特に現地の生態系に配慮した施工方法により自然保護の取組みをしました。現地は主に広葉樹林からなる里山でした。植物の種も豊富でスギ、ヒノキだけが植えられた単相林とは異なり、多様な生物が生息できる自然環境になっており、希少種も自生していました。「この豊かな自然を次の世代に残したい。」そんな思いで工事を行いました。

工事概要

当工事は香南市香我美町稗地から岸本の国道55号までの改良工事の一部でした。自衛隊駐屯基地の造成に伴い現道が一部寸断されるため、現道を拡幅する工事ではなく南側 の山林を切り開き、新たにバイパスを設ける工事でした。
オープンカットで切開き(V=55,000m²)法面保護はポット苗の植樹(A=3,400m²)を行い、最下段は山留擁壁を施工する工事でした。

写真1

自然環境への影響を低減させるため、工事着手にあたり伐開をする場所より自生する樹木の苗(約400本)を採取し育成してポット苗に利用しました。伐採木も加工してポット苗の木柵に再利用しました。

当工事では発注者と自衛隊との協議により、現道の切り替え時期が当初計画より25日早められることになりました。そこで、工程と施工方法の再検討を行いました。工事の残土運搬は現道を使用しての運搬となっていましたが、現道は狭隘で離合箇所も少なく1日の運搬量には限界がありました。そこで、自衛隊敷地内に仮設道を設置し、できるだけ現道を通過しないようにしました。また現道を使用する箇所では離合場所の追加、中間点での交通整理人の配置等により、スムーズなダンプ運搬ができ一日の予定運搬量を確保する事ができ、切替に間に合いました。

また、新設の道路部を横断するボックスカルバートの施工では、基礎地盤は岩盤を想定していましたが、掘削したところ粘性土で湧水もありました。土質試験を行って検討した結果、支持力確保のため支持地盤まで掘削し、岩砕により置き換えをする工法を採用しました。置き換え完了後、平板載何試験にて支持力の確認をして施工しました。

岩盤まで床掘岩砕置き換え
岩盤まで床掘岩砕置き換え

切土高20mを超える切土法面では法面の変状があった場合、大きな地山崩壊災害につながる恐れがあります。その為、当工事では地質専門技術者(地質部門RCCM)により現地法面の確認を行い、発注者を交えて協議、打合せを行いながら工事を進めました。現地法面の確認は、湧水、土質変化、亀裂等の異常の有無を小段毎に行いました。

調査の結果、全体に風化はしていたが、亀裂面は密着し地質的弱線・湧水も見られず安定していました。変状の兆候も見られなかったことから当初設計通りS=1:1.2勾配としました。また、発注者と協議の結果、落石防護柵も設置しないことにしました。結果として法面の安全性を確認でき、長大法面の下を安心して通行できる道路になったこと は一応の成果だと思います。

工事を振り返って

工事による現地の生態系への影響をできるだけ低減させることに取り組もうと、現地に自生する苗木の植樹を行いましたが、枯れるのではないか、育たないのでないかと不安がありました。しかし、自然の生命力は強く、植樹したすべての苗が順調に育っており、安堵するとともに一応の成果があったことを確認しました。

おわりに

こうした取組みの結果、無事故・無災害でかつ自然環境に配慮した工事を完成させる ことができました。これも発注者や地域住民・関係諸団体ならびに協力会社のご指導と ご理解・ご協力のあった上のことと深く感謝しております。

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